知床国立公園の歴史に関する参考資料
2003年1月、知床国立公園とその周辺約56,000ヘクタールの地域が世界自然遺産に推薦されました。知床は日本有数の豊かな自然の残る国立公園として知られています。一方、この土地も北海道の他の地域と同様に先史時代からの人々の生活があり、資源開発や農業開拓の試みが幾度も行われて来た地域です。世界自然遺産登録を前に知床のたどってきた道を年表で振り返ります。
第1期: 縄文時代からアイヌ文化期まで、自然の恵みのなかで自然と共生した人間の時代
- 約8000年前 縄文時代早期の遺跡(幌別川口遺跡・トビニウス川南岸遺跡など)
- 約5500年前~2000年前 縄文時代前期~縄文時代晩期の遺跡
- 2000年~ 続縄文文化期の遺跡
- 7世紀~13世紀 擦文文化期の遺跡
- 6世紀~11世紀 オホーツク文化期が並立(ウトロ遺跡、知床岬遺跡、相泊遺跡など)
- 13世紀~ アイヌ文化期。ウトロ、ルシャ、知床岬などにコタンがあった。
- 1669年(寛文9年) アイヌ民族の蜂起であるシャクシャインの戦いにルシャと知床岬からそれぞれ百人のアイヌが参加(津軽一統誌: 文献上最初の知床に関する記述)
- 1789年(寛政元年) クナシリ・メナシの戦いに目梨領(羅臼)のアイヌが参加
第2期: 知床開拓の時代、近世の場所請負制度の開始から昭和30年代の終わりまで
- 1790年(寛政2年) 斜里場所開設(場所請負制度による和人の漁場経営)
- 1853年(安政5年) 松浦武四郎半島を一周、「知床日誌」には場所請負制度の中で著しく衰退するアイヌコタンの様子や硫黄山噴火について記述されている
- 1854~60年(安政6年~慶応3年) 会津藩による硫黄採掘事業
- 1873年(明治6年) 開拓使の雇米人地質学者ライマンが知床硫黄山を調査
- 1878年(明治11年) 皆月善六による硫黄採掘始まる(明治36年まで継続)
- 1880年(明治13年) 知床硫黄山噴火、明治22、23、28年にも硫黄噴出
- 1914年(大正 3年) 岩尾別に最初の開拓者入植。その後集団入植で開拓者増加するが、バッタの大発生(大正8年頃)などにより、大正14年(1925年)までに全戸が退去
- 1936年(昭和11年) 知床硫黄山噴火・硫黄噴出(昭和15年まで硫黄採掘)
- 1937年(昭和12年) 岩尾別に再度入植はじまる
- 1949年(昭和24年) 戦後緊急開拓政策による岩尾別入植
- 1953年(昭和28年) 知床半島初の学術調査実施
- 1958年(昭和33年) 斜里ウトロ間の道路開通
- 1959年(昭和34年) 作家戸川幸夫が知床の自然や野生動物を紹介
- 1961年(昭和36年) 国の自然公園審議会が知床の国立公園指定を答申
- 1962年(昭和37年) 知床林道着工(1969年開通)
- 1963年(昭和38年) 開発道路宇登呂羅臼線(知床横断道路)着工
- 同年 知床岬に無人灯台完成
第3期: 保護と開発が並行あるいはせめぎ合った時代
- 1964年(昭和39年) 知床国立公園指定(1984年、95年に公園計画の改訂)
- 1966年(昭和41年) 岩尾別開拓地に残る最後の24戸が集団移転
- 1971年(昭和46年) 「知床旅情」のヒットによる知床ブームで観光客増加
- 1972年(昭和47年) 斜里町自然保護条例制定
- 1974年(昭和49年) 斜里羅臼両町による「知床憲章」制定
- 1977年(昭和52年) 知床100平方メートル運動スタート
- 同年 知床岬地区(文吉湾)に避難港完成
- 1980年(昭和55年) 知床横断道路開通
- 同年 第1回知床自然教室開催
- 同年 遠音別岳原生自然環境保全地域指定
- 1982年(昭和57年) 国設知床鳥獣保護区指定
- 1984年(昭和59年) 国立公園計画の改訂(地種区分の格上げ、利用計画の削除など)
- 同年 シマフクロウ保護増殖事業開始
- 1987年(昭和62年) 知床国有林伐採問題
- 1988年(昭和63年) 知床自然センター開設
- 1990年(平成2年) 知床森林生態系保護地域指定
第4期: 保護区の時代
- 1990年(平成2年) スノーモビル乗り入れ規制開始
- 1995年(平成7年) 国立公園計画の改訂(特別保護地区の拡大など)
- 1997年(平成9年) 知床100平方メートル運動募金目標達成、新運動へ
- 1999年(平成11年) 五湖・カムイワッカ間の車両規制開始
- 2002年(平成14年) 国指定知床鳥獣保護区の改訂(面積拡大、特別保護指定区域新設等)
- 2003年(平成15年) 知床森林生態系保護地域の改訂(面積拡大等)
- 2004年(平成16年) ユネスコに知床の世界自然遺産登録を推薦
この年表は下記の10、11をもとに再構成しています。さらに詳しく知りたい方は下記の文献を参考にして下さい。
文献名
- 秋葉実解読(1994)松浦武四郎知床紀行集.97 pp.斜里町立知床博物館協力会.
- 斜里町史編纂委員会(1955)斜里町史.939 pp.斜里町役場.
- 斜里町史編纂委員会(1970)斜里町史第2巻.1053 pp.斜里町役場.
- 斜里町史第三巻編纂委員会(2004)斜里町史第3巻. 1242 pp.斜里町.
- 斜里漁業史編纂委員会(1979)斜里漁業史. 786 pp.斜里漁業史編纂委員会.
- 俵浩三(1979)北海道の自然保護.308 pp 北海道大学図書刊行会.札幌.
- 俵浩三(2005)北海道の国立公園の始まりと21世紀のあるべき姿.北海道の自然43: 6–17.
- 村田良介(2004)しれとこ百平方メートル運動の歴史と現状.モーリー10: 18-21.
- 中川元(1985)知床をめぐる自然保護と開発の歴史.知床半島—自然と生き物たち.pp 44–45.人と自然の会,東京.
- 中川元(2005)知床国立公園の歴史.博物館のひろば.92: 1–2 知床博物館.
- 中川元(2005)知床国立公園地域のたどった道.北海道の自然43: 18–21.
- 中川元(2005)知床半島の開発と自然保護.農業と経済71(6): 30–38.
- 羅臼町史編纂委員会(1970)羅臼町史.859 pp.羅臼町.
- 羅臼町百年史編集委員会(2001)羅臼町百年史.1832 pp.羅臼町.